コラム
COLUMN
家づくりでは、間取りの広さや動線、収納スペースの使い勝手などに意識が向きがちですが、実際の暮らしやすさを左右する大切な要素のひとつが『照明計画』です。
照明と聞くと、部屋が明るくなるかどうかを基準に考えることも多いかもしれません。
しかし、明るさが十分でも、光の位置やバランスによっては、落ち着かず過ごしにくいと感じる場合があります。
こうした違和感は、光が視界に入りやすい位置にあったり、空間の中で明るさに偏りがあったりすることで生じる"視界のストレス"が関係していることもあります。照明は単に部屋を明るくするためのものではなく、空間での居心地や過ごしやすさに大きく関わる要素のひとつです。
だからこそ家づくりでは、間取りや動線、設備と同じように、照明計画についてもあらかじめ意識しておくことが大切です。
今回は、家で「なんとなく落ち着かない」と感じる原因のひとつである視界のストレスに着目しながら、家づくりを進める中で考えておきたい照明計画のポイントについて分かりやすく解説します。

まず、照明計画とは、照明の位置や種類を決めることです。
この照明計画は空間の明るさだけではなく、居心地や過ごしやすさにも大きく関わります。
一方で配線計画は、その照明を使用するためのスイッチや配線を決めるもので、照明計画と密接に関係しています。失敗しても後から変えればいいのでは?と思ってしまいがちですが、多くの照明は天井や壁の内部に配線を通して設置されるため、家の完成後に位置を変更することは簡単ではありません。
変更できないわけではありませんが、仮にリフォームなどで位置を変更する場合、天井や壁の一部を開いて配線の工事を再度行う必要もでてきます。
家づくりの打ち合わせでは、間取りや内装に意識が向きやすい一方で、照明や配線についてはつい後回しになってしまうことも...。しかし、照明は日々の暮らしに欠かせない要素です。だからこそ家具の配置や生活動線なども踏まえながら、事前にしっかりと計画していきましょう。
なお、スイッチやコンセントの位置など、配線計画のポイントについては、以下のコラムでも詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
▶ 理想を叶えるプラスの家づくり|見落としがちな配線計画、プチ後悔を防ぐコツ!
同じ明るさの部屋でも落ち着いて過ごせる空間と、どこか居心地の悪さや違和感を覚えやすい空間があります。これらの違いのひとつが、光の位置や広がり方です。
例えば、視線の先に強い光源があると、必要以上にまぶしさを感じやすいです。
また、空間全体が均一に明るすぎる場合も、落ち着けないと感じることがあります。
これは、光の強さだけではなく、照明がどこを照らしているのか、どこにあるのか、照明の位置や種類によって変化します。
家の中には家族で過ごすリビング、体を休める寝室、身支度や家事を行う洗面・キッチン、移動や空間を繋げるための廊下や階段など、さまざまな役割を持つ空間があります。
それぞれの場所・用途にあった照明を計画することで、必要な明るさを確保するだけではなく、違和感を抑えた最適な空間になり、視界のストレスを軽減することができます。
ここまでご紹介してきたように、照明の位置や光の広がり方は、空間の居心地や視界のストレスに大きく影響します。こうしたストレスを抑えて自分たち家族のライフスタイルに合った快適な住まいをつくるためには、照明の役割を理解した照明計画が必要です。
ここでは、よく使われる代表的な照明の種類とそれぞれの役割、メリットやデメリット、注意点をご紹介します。

シーリングライトは天井に直接取り付けるタイプの照明で、部屋全体を均一に明るくできるのが特長です。シーリングライトひとつで十分な明るさを確保できるため、賃貸住宅などでも広く使用されており、最も一般的な照明のひとつでもあります。
空間全体を照らせるメリットがあるため、子ども部屋など明るさを確保したい場所におすすめです。また、照明器具の交換やメンテナンスが容易なこともメリットとして挙げられます。
一方で近年の家づくりでは、空間をスッキリ見せたいという理由などから、リビングにはシーリングライトではなく、ダウンライトなどの照明を組み合わせて計画するケースも増えてきています。

ダウンライトは天井に埋め込んで設置するタイプの照明で、照明器具が目立たないため、空間をスタイリッシュに見せながら照らしてくれます。
埋まっていることで天井から吊り下げるペンダントライトとは異なり、でっぱりや飾りがないため、ほこりが溜まりにくく掃除などのメンテナンスがしやすいのもポイントです。
ただ、真下を照らす構造のため、見上げると非常に眩しいだけではなく、設置する数を考えないと天井がダウンライトだらけになってしまうケースも...。
ダウンライトは天井に穴をあけて埋め込むタイプの照明のため、完成後容易に位置を変更できないことも覚えておきましょう。

ペンダントライトは天井から吊り下げて設置するタイプの照明で、手元をしっかり照らすことができます。デザイン性も高く、種類も豊富です。特にダイニングテーブルの上やキッチンカウンターの上などで使用されることが多く、食事や作業がしやすくなるだけでなく、空間のアクセントとしての役割もあります。
設置の際とくに重要なのはライトの高さと位置です。ダイニングテーブルとズレてしまったり、コードが長すぎると作業の邪魔になってしまったり、十分に照らされていない状態になってしまうこともあります。
目線より少し高い位置が適切で、高すぎると照明として機能しなくなってしまうのも注意が必要です。
明るさや華やかさが欲しい場合は、ダクトレールなどを使用して複数個吊るすのもおすすめです。

スポットライトは特定の位置や場所を集中的に照らすタイプの照明で、照らす方向を調整できるタイプも多く、陰影による洗練された空間の演出にも人気です。美術品、アートやポスター、観葉植物など、部屋の中で際立たせたいものがある場合に相性がいいです。
ただ、光量は多くないため部屋全体を照らすのには向いていません。ダクトレールなどを使用して数を調節したり、眩しさが気になる場合は、あえて壁や天井などに反射させることで柔らかい印象にすることも検討してみてください。

ブラケットライトは壁面や柱などに取り付けるタイプの照明で、空間に奥行きを作ってくれるだけでなく、圧迫感もなく場所をとりません。もともと装飾などの用途で作られているため、さまざまなデザインがあり、お洒落な空間づくりに人気です。
ブラケットライトはメインの照明ではなく、補助的な役割を担うため、強い光を必要としない空間に設置するようにしましょう。
基本的に壁に取り付けるものですが、中には工事不要のブラケットライトもあります。
この場合コンセントプラグ付きで、配線自体は見えた状態になるため、足をひっかけたり思わぬケガを起こさないように、階段など人の動きが多い場所ではなく、寝室や書斎のデスクなどの間接照明として使用するのがおすすめです。

間接照明は壁や天井などに光を反射させて空間を照らすタイプの照明で、光源が直接見えないため眩しさを感じにくく、柔らかい光が印象的です。
間接照明は柔らかな光を演出できる一方で、反射光だけで空間を照らすため取り付ける場所によっては明るさが足りないと感じる場合があります。そのため、細かい手元作業が必要なキッチンや子ども部屋、書斎にメインの照明として使うには不向きです。
また、間接照明は光源が見えないように、折り上げ天井などにする必要があり、ほかの一般的な照明に比べ、施工の手間やコストがかかります。
ほかの直接照明と併用することで、空間の明るさを保ちながら、お洒落な空間を作ることができます。

スタンドライトは工事不要で設置ができる照明で、必要な場所に気軽に設置できます。
手元を照らすことに特化したもの、演出などデザイン性に特化したものなど、ほかの照明に比べ種類が多く、暮らしながら追加がしやすいのもメリットです。
ただ、床に置くタイプのスタンドライトは床スペースを埋めてしまうだけではなく、配線が見えたり、コンセント近くに配置する必要もあるので大きさには注意が必要です。
メインの照明ではなく、補助的な照明として使用するのがおすすめです。
住まいの心地よさは、空間ごとに「求める光」が異なります。
事例を見ながらそれぞれの空間で大切な照明計画のポイントを抑えていきましょう!

こちらの事例では、奥さまからのリクエストでリビングを折り上げ天井に。
日中はキッチンのハイサッシから心地の良い自然光が入り込み、日没後は柔らかい間接照明でリビングを包みながら、ダウンライトと併用することで、どの時間帯でも明るさを十分に確保できる空間になりました。
LDKでは、空間全体を均一に照らすだけではなく、間接照明や補助照明を組み合わせることで、時間帯や家族それぞれの過ごし方に合わせた明るさをつくることができます。

こちらの事例では、ドアを開けた瞬間に目線が遠くまで抜けていくようなシックで重厚な土間空間に。
造作棚にはあえて扉を設けないことで間接照明で照らして「魅せる空間」を演出した素敵なエントランスになりました。
エントランスでは特に足元の明るさを確保する必要があります。
間接照明を取り入れることで空間に奥行きをもたらし、帰宅時にホッとできる空間づくりにもつながります。 買い物の帰りなど、両手がふさがっていても不便にならないように、センサー式のライトを取り入れるのもおすすめです。

こちらの事例では、モールテックスのキッチンと木目の下がり天井、ダウンライト、ペンダントライトのバランスが調和して、クラシカルな趣があるバーのようなキッチンになりました。
キッチンは全体の明るさと、手元をしっかりと照らす照明の配置が大切です。
細かい作業でも不便にならないように照明を組み合わせて、機能面でもデザイン面でも快適なキッチン空間にしましょう。

こちらの事例では、淡いグレーでコーディネートした寝室に。ベッド横には間接照明を採用したことで、優しい灯りがリラックス空間にピッタリです。
トイレでは間接照明とアールの垂れ壁、薩摩中霧島壁を合わせたことで、調湿・消臭に優れながら優しい灯りの広がりが空間に奥行きと落ち着きをもたらしてくれています。
寝室やトイレなど、落ち着きたい場所では、空間全体を均一に照らす照明よりも、柔らかく広がるような光が強すぎない照明を取り入れることで、リラックスしやすい環境になります。
照明は、空間を明るくするだけではなく、光の位置や広がり方によって、過ごしやすさに大きく影響します。特に、視線に入りやすい位置の光や空間全体の明るさのバランスは、"視界のストレス"として無意識のうちに気になってしまう部分でもあります。
今回ご紹介したように、LDKでは間接照明やダウンライトを組み合わせて時間帯に応じた明るさを作ったり、キッチンなど細かい作業が必要な場所には手元をしっかりと照らせる照明を取り入れるなど、空間の用途に合わせて照明を選択することが大切です。
こうした視点で照明を考えることで、単に明るいだけではない、心地よい住まいにつながります。
毎日過ごす家だからこそ、明るさだけではなく、空間ごとの照明の種類や役割をよく考えて"視界のストレス"のない照明計画を進めていきましょう!